30代会社員の私が「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」をクリアした感想


ニンテンドーswitch「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」をクリアしました。

目頭が熱くなりました。プレイ時間は約120時間時間。会社での仕事と子育てに追われながら、毎日少しずつコツコツと進めてきましたが、いったいどうしてこれほど感情を揺さぶられたのか?今でもよく分からずにいます。

具体的な面白さについては、インターネットで素晴らしいレビュワーさんがたくさんいらっしゃいますので、30代男性サラリーマンである私の視点から、本作をクリアして感じたことについて書いてみようと思います。

どうしようもなく無力な自分を励ましてくれた

20代で社会人になりガムシャラに働き、30代で社会における立ち位置がある程度決まり始めると、なんとなく自身の限界が見えてきたり、子供の頃に抱いた将来像と現実とのギャップに悩んだりします。より良い暮らしをする同世代の人間を疎ましく思い、自分の価値の小ささに失望したりもします。今の自分は、昔思い描いた勇者とはまるでかけ離れた存在。

ところが本作に登場するキャラクター達は決して選ばれしヒーローなどではなく、皆自身の無力さに思い悩んでいます。

特にヒロインであるゼルダ姫は、舞台となるハイラルの平和を願い悩みながら試行錯誤するも全く実を結ばず、王宮の人間からは「責を果たせぬ無才の姫」と揶揄され、それを実の父親から聞かされます。すべての国民からあまねく愛され、慕われるお姫様などでは決してありません。

プレイヤーが操作するリンクは何度も何度も死にます。死にゲーと言われるほどシビアですが、繰り返し思いつく限り知恵を絞り、少しずつ攻略の糸口が見えて来ます。

ゼルダ姫と彼女を助けるリンクや仲間達の活躍を通じて、何もかもうまくいかない、だけど100年という気の遠くなる長い時間ひたむきに戦い続けるゼルダ姫の姿に現実の自分自身を置き換え、リンクの身を借りてをその呪縛から解き放とうとしているんじゃないか?とすら思えました。

自分で道を切り開く「冒険の楽しさ」を思い出した

経験や慣れというものは寂しいもので、「このあたりで宝箱が出てきて、それっぽい武器がある。そろそろ新しい仲間が加わって、ここに入るとボスが待ち受けていて…」なんて、ゲームの展開を想像できてしまうようになるものです。
ところが本作はゲーム開始後に裸一貫で大地に降り立ってから、何をするにもどこへ行くにもとにかく自由。極端に言えば、開始直後リンクの記憶の無いまま眼下に見える禍々しい最終地点へ突撃することだってできます。

空を泳ぐ龍だったり、目覚めた勇者を狙う刺客が町人に扮していたり、正義なのか悪なのかわからない存在もたくさん待ち構えています。野生の動物や食材、生き物やオブジェに触れると思わぬ反応が返ってきたり、各地に隠された宝物を探したり、少し足を延ばせばこれまで見たことのない何かが出て来ます。

それから本作は広大な大地のどこへでもいけます。障害物に道を遮られることなく、山があれば登り、川があれば泳ぎます。その先に何があるんだろう?と、極寒の山、灼熱の山を越えていくと、やっぱり何か見た事の無い何かがあるし、もちろん何も無いことだってあります。どこへだって行ける。公園を抜け、もっと足を伸ばした。昔感じた冒険の楽しさがあります。

自分の仕事や生き方に誇りを持つことのすばらしさを感じた

世界中に丁寧に散りばめられたあまりの仕掛けの多さに、とにかくプレイヤー、タイトルに対する開発側の誠実さ、こだわり、愛情を感じました。

同時に私は社会人として、本作をプレイしていて「怖さ」を覚える瞬間がありました。本作の開発にあたって、メンバーはどれほどの労力を費やし、努力を重ねたんだろうか?ひょっとしたら不眠不休だったかもしれないし、衝突だって何度も経験したのかもしれない。私生活を犠牲にして、我々と同じように思い悩んだかもしれない。かくしてゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルドは、一切の妥協を許さない素晴らしい出来となりました。

さて自分はどうだろうか。今の仕事に誇りをもって働けているのだろうか?もしそうでないのならば、勇気を出してもう少しだけ足を延ばしてみたら、その先で何か道が開けるんじゃないか?

ゲームの複雑化は著しく、バグはあって当たり前、ゲームバランスの細かい調整はアップデートで補填、そういう風潮に業界全体が変わりつつあります。一方で、そんな環境に少しずつ慣れ始めている自分たちもいますが、本作はそういった後手後手の対応無く、絶妙なバランスで完璧に仕上げました。プロの仕事をまざまざと見せつけられプレッシャーを感じると同時に、こんなにも心揺さぶられ、同じ社会人として「お前もできる、乗り越えられる」不思議とそう励まされているような気持ちにもなりました。

最終的に10分にも満たないわずか数分のエンディングを迎え、言葉には言い表せない、胸に込み上げてくる何かがありました。ガノンの厄災から100年後に目覚めたリンクが、今でも必死に戦っているゼルダ姫を助けるというシンプルなストーリーにもかかわらず。

大げさではなく、このゲームを通じて私は「楽しいことは向こうからやってくるんじゃない、自分から探しに行くんだ」という気持ちが沸き上がってきました。ゲーム黄金期を生き、ゲームどころではなく日々の生活に思い悩み奔走する30代〜40代の方にこそ遊んで欲しいです。

人生は退屈なものなんかじゃない。僕たちはきっとこの先も、楽しい事を楽しいと感じられるはず。

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