北斗の拳は好きです。ファルコ、レイ、ジュウザ、漢気のあるメンズが好きです。
さて、PS4「北斗が如く」をクリアしました。
確かに面白かった!けれど、何度も繰り返し遊んだり、その魅力を熱く語れるまでには至らず。
一方、これまで龍が如くシリーズもほぼ全てプレイ済み。その上で感想を申し上げると北斗が如く、「及第点」といったところです。
北斗神拳でなぎ倒す爽快感強め!戦闘は手堅く面白い
龍が如くでお馴染みの戦闘がよりファンタジックに、派手になっています。
基本1対1のスタイルでシーンによっては無双よろしくワラワラと大群が登場しますが、チマチマ倒すのもまた楽しい。奥義でトドメを刺す北斗神拳も面倒かと思いきや、ビジュアルの派手さと原作好きが功を奏して思った以上に飽きは来ず。
QTEはあっても無くてもどっちでも。
無敵の男ケンシロウが敵を蹴散らす姿は何度見てもやっぱりカッコいい。けれど、原作ファンでなければこの繰り返し映像は苦痛に感じる可能性もアリ。
難易度も程よく、複雑なアクションを駆使するもよし、レベルや装備でコツコツと強化させるもよし、アクションが苦手でもなんとかなるあたりもシリーズならでは。
「ひでぶコンテスト」の断末魔がいちいち楽しい!
秀逸だったのが、ケンシロウが奥義でトドメを刺した時に発せられる断末魔。これはもう素晴らしいの一言。
通信カラオケシステムDAMとの協業企画「あべしオーディション」で、一般の方により応募された様々な「ひでぶ」が、暴漢たちの断末魔として採用されています。
普段の生活で一体何があるんだ?というくらいぶっ飛んだ絶叫を聞かせてくれます。
原作においてもコミカルな色味であるこの断末魔をこういう形でゲームに取り入れる遊び心は見事!戦闘を飽きさせない要素にもなっています、いちいち楽しい。
「TOUGH BOYになりたぁいッ!!」という断末魔とか、もうイカれてるとしか思えない。
残虐な表現、世界観をちゃんと描写
人によって許容できる残虐性の幅は様々ですが、個人的には北斗の拳らしい描写、雰囲気はきちんと表現されている印象です。
暴力そのものの目を覆いたくなるような残虐性だけではなく、子供や老人にも容赦なく襲いかかったりと見ていて辛くなるシーンが登場します。それこそが北斗の拳の世界であり魅力。(もちろん現実世界ではあってはならないことは承知の上)
BPOがどうだとか子供への影響がどうだとか刺激物の一切が排除される時代ですが、混沌とした原作のイメージを壊さず再現されているのではないでしょうか。
CEROはC指定、15歳未満の若者はまだ買っちゃダメだぜ〜?
メインストーリーに空気を読まないサイドミッションが挟まれる
続いてイマイチだった点。メインのストーリー中に脈略の無いサイドミッションが強制的に挟まれます。
シリアスなシーンの直後に…
死闘に勝利し、物語の謎が明らかにされていくタイミングで、ナイトクラブ運営のサイドミッションが突然強制的に始まったり、黒幕の存在が明らかになりつつある鬼気迫る状況において、突然看護婦が「ケンシロウクリニック」の開業を持ちかけたり。
いきなり始まるコミカル。
名物のサブコンテンツに触れて欲しい気持ちは理解できるけれど、空気も読まない展開に、高まったテンションは一気にクールダウン。
操作性、ロード時間、マップ移動など いまひとつ洗練されていない快適さ
操作性はもうPS2の龍が如くのまんま。
移動時の方向転換や階段の上り下りには妙なモタつきがありファストトラベルも無いため、狭く起伏の激しい街中を端から端までバカ正直に歩き回るのはなかなかの苦行です。
拠点となる街「エデン」の他にも街の外に広がる荒野はバギーで移動。このマップがとにかくだだっ広い。その上に目的地はたったの3つ4つ程度。
この荒野に出るのが憂鬱なのは単にだだっ広いだけではなく、とにかくロードが長い。荒野に出入りする時、建物から出入りする時など。このご時世、通常盤PS4で20〜30秒程無音の真っ黒な画面を見せられるとは。
カメラワークにもやや不満が。特に戦闘中後半にかけて敵がスピーディーになるにしたがって、攻撃そのものよりも右スティックの視点切り替え操作の方が忙しくなる始末。
龍が如くがリリースされた2002年から既に15年以上も経過していますが、快適性はもう少し改善できなかったのか?この進歩の無さは残念。
ご都合主義感が強いストーリー
メインのシナリオですが、無理矢理こじつけた感、釈然としないモヤモヤがあります。
例えば、これまでエデンの秩序を保っていた門が凶王軍によって破られ、続けざまにその穴からサウザー率いる聖帝軍に攻め込まれたにも関わらず、エデンの長であるキサナが「これからは私らしく統治します。門を全面開放することにします、みんなのエデンを作り上げましょう!」と声高に門の開放を宣言。
これに対し、つい昨日今日暴徒の侵略によって酷い目にあったばかりの民がなぜか全員歓喜。
カリスマ的な前の長であった父に感じていた引け目を払拭するシーンですが、秩序と生命を守ってきた門をキサナのノリと直感で取っ払って民全員が歓喜に沸く、こういった信憑性のなさやウソ臭さからどうしてもシナリオに没頭することができませんでした。
方々からの襲撃によりどえらい目にあった民が、門の解放宣言になぜか皆両手を上げて大喜び!
登場人物は表面的にしか描かれていないのも気になります。
例えば本作に登場する聖帝サウザー。本作品においても突然エデンを襲う傍若無人で無慈悲な男ですが、原作においてはかつて純粋そのものであった彼がそこに至る経緯が描かれており、そういったドラマチックな背景は一切描かれません。もはやただの悪人。
実は自分を育ててくれた師匠への想い、忠誠心の強い男気ある一面も
プレミアムエディションと通常盤との線引きがイケてない
本作の「世紀末プレミアムエディション」には、戦闘BGMをあの名曲「愛をとりもどせ!!」「TOUGH BOY」に変更することができ、あの時の北斗の拳が蘇ります。原曲がそのまま流れることで、北斗の拳をプレイしている感が強くなります。素晴らしいです。
が、このBGMは通常盤には含まれておらず。
北斗の拳の世界を桐生一馬で旅するビジュアル変更を追加要素として取り扱うのはまだ理解ができる。「北斗の拳」の世界だからね。だけど、北斗の拳らしさを感じられるこういった素晴らしい要素を、特定の人だけに味合わせるのは本当に勿体ない。ただの意地悪だとしか思えない。この線引きのセンスがイケてない。
通常盤には無いBGM変更機能はぜひ体験してみて頂きたいところですが…。
と思って後々Amazonのユーザー評価を見てみると、通常盤とプレミアム版に大きな乖離が。読み解いてみると、やはりこのBGMに対する評価が大きい模様。(一方桐生さんのビジュアル変更についてはあまり触れられておらず)
ゲームは面白いけれど、北斗の拳の無駄遣い?
ゲームそのものは面白いです。アクションやゲームバランス、やり込み要素やコレクション性など、楽しい要素はたくさん散りばめられています。が、北斗の拳と龍が如くのどちらに寄せたかったのかが不明瞭で、結果的に得体の知れない違和感が残ってしまいました。北斗の拳ファンとしては「そうじゃない」感は強かったです。
エンディングもそうじゃない感が強かったです。
せっかく人気の高い作品を取り扱うのであれば、もう少し原作に対する愛情、リスペクト精神があっても良かったのでは?加えて、既存の開発エンジンに依存し過ぎなのか、ゲームの快適性の薄さもやや気になります。
何となく派手なアクションとアウトローな世界が龍が如くと共通しているから、ケンシロウをモデリングしてみました感が拭えず、正直開発側の趣味、独りよがりな印象も受けました。
漫画原作のゲーム化の難しさを感じると同時に、これまでシリーズ通して欠かさず「龍が如く」シリーズをプレイしてきたのは、やはりシナリオの魅力であることを再確認できた良い機会になった気がします。
結論、クリスタルキング「愛をとりもどせ!」、TOM☆CAT「TOUGH BOY」最高!(プレミアムエディションのみ)