新橋に「謎のゲームショップ」があるとのだそうな。
なんでも品揃えは良いがとにかく高く、店頭には購入意思が無い方は入店しないよう注意書きされた、一見さんお断りのようなお店なのだそうな。
ゲームショップは本来どんなちびっ子でも受け入れてくれる懐の深い店なはず。
そんな西麻布のバーみたいなゲームショップってあるのか?
行ってみた。
ニュー新橋ビルに「ファミコンショップマリオ」はあった。
夏の新橋はジリジリと暑い。
夏が来た!とか、テンション上がっちゃう種類の人間が一定数いるが、暑さで頭やられちゃっているとしか思えない。
そう言えば同じく当サイトメンバー夏海ちゃんも夏の到来を喜んでいた。名は体を表す。逆に夏海ちゃ何んが「夏なんて大嫌い!」とかいうタイプだったらどうだっただろうか?俺が夏海ちゃんだったら改名していたのかもしれんな。そんなことはないか。
そんな新橋駅を南口に出て目と鼻の先にあるニュー新橋ビルへ、夏の熱波をかき分けて向かう。
グルメから金券ショップ、マッサージ店まで、1971年に出来た雑居ビルは、長きにわたって昭和のサラリーマンのアフターファイブをサポートしまくってきたであろう佇まい。
そして3階にその店はあった。
雑居ビル脇脇の横丁にある居酒屋のような看板。
雑居ビルに突如現れたゲーム店「ファミコンショップマリオ」。
この一角だけ、薄暗い通路に電子部品をいっぱいに並べた昔の秋葉原みたい。
しかしながら、ゲームショップを渡り歩いた昭和生まれの世代にはどこか安心感すら覚える。かつて上野や秋葉原にはゲームショップが軒を連ね、どこが安いのか?レアな商品は無いか?物色しながら歩き回ったものである。
このファミコンショップマリオにはレトロゲームだけではなく新品も取扱はあるが、運営方針から基本的には割引はしていない様子。
主軸となるであろうレトロゲームについても噂に聞いていた通り割高感はあり、レトロゲームが高騰している昨今であっても数百円で買えそうな箱、説明書無しのソフトですら3,000円前後というシビアな価格設定。
価格の表記されていないものはいったいいくらなのか…?
また値札が書いていないソフトもあり、価格はお店に確認ということになるのだろうか。
ちょっと良さそうな料理店に入り「時価」のメニューを目にしてしまったような緊張感がある。
そしてこれが例の入店お断りの貼り紙ですね。
「申し訳ございませんが、購入意思のないご入店はご遠慮ください。」とのことで、この注意書きが数多のレゲーファンの立ち入りを拒んできた模様。
が、こちとらお目当てのソフトはバッチリ確認済みなので、予算内であれば買う気は満々。足を踏み入れてみることに。
ここからは完全なバックヤードで表には出せなさそうな情報のため、記憶を頼りにイメージでお伝えするとしよう。
注意書きの貼り紙をくぐって店内に足を踏み入れてみると、そこは棚いっぱいにソフトが並んだ倉庫のような空間だった。
※イラストはイメージです。
そこは便宜上「商談スペース」となっている様子で、Switchなどのハードが複数代テーブルに転がっていた。同店の公式ページによると、最近発売されたモンハン新作を店内でプレイしているとのことなので、土曜日の昼間ではあったもののお客さんは見られずお昼時でもあったので、スタッフ間で狩りでもしているのかもしれない。
中にはレトロな筐体も一台あり、こちらも公式ホームページによれば有志の方が提供してくれたとのこと。常連客やリピーターで成り立っている印象。
さて、早速本題に。
表に陳列?されていた商品には値札が書かれていなかったため、店員さんに目当てのソフトの価格を尋ねてみる。30年ほど前に発売されたゲームギアのソフト「ファンタシースター外伝」「シルヴァンテイル」である。
中古とはいえ、箱にヨレもなく美品。メルカリで見たところ、どちらも2,500〜3500円で売られている商品。(2022年5〜6月現在)
これは5,000〜6,000円くらいか?それでもせっかく新橋まで足を運んだし、これもご縁だと思って5,000円台なら買ってしまおうかなと店員さんに尋ねてみた結果、前者は10,000円、後者は20,000円という価格設定だった。
に、にまんえん…。
今私が二万円を手にしていたとしたら、何を買うだろうか?それは一本の美品ではなく、LCD液晶にカスタムされたゲームギア本体だろうな。それが私の求める価値であって、残念ながらお店の提供する価値基準と合致しなかっただけのこと。交渉決裂である。
そして値段だけ言い残し、特にそれ以上語る気もない様子で店員さんはそのままバックヤードへ消えていった。
高い。が、美品が多い。…にしても高い。
結果として、かなり割高感のある店ではあったものの、箱説ありのものは美品が多かった印象(陳列は割とアレだったが)。
公式サイトには、お店の存続のためには我々消費者側も多少高くても受け入れてほしいという感情や、ゲームショップの実情や苦悩、本音も綴られていた。
一方、それじゃ我々のような新規を受け入れてくれるかというとそういった印象はなく。どこか疎外感すら覚え、居場所を求めるかのように帰りに新宿の駿河屋に寄って一度心をリセットさせた。
値段といい姿勢といい、帰りに寄った駿河屋の安心感よ。
昨今では様々な 我々消費者も購入手段を多様に選択できる時代になった。
ゲームファン、そして実店舗好きな身から敢えて厳しい言葉を言わせてもらうならば、消費者がより安さを求めてしまうのは必然であり、どの業界であっても環境の変化の中そこをどう切り抜けていくかを考えるのも企業努力、責務であると、異業種ではあるものの同じく環境の変化に翻弄されている身としては思うわけで。生き抜くということは創意工夫の連続なのだ。
私も現物は好きです。サガフロンティア2のアルティマニアを駿河屋で購入して帰宅。
少し揚げ足取りみたいな書き方になってしまったけれど、私個人としては、売り手の作法から外れて購入してしまうと「悪い購入者」として評価され、その他の商品の買い物にも支障をきたす可能性まで出てくるフリマサービスには少なからず抵抗感を抱いている。
多少割高であっても現物を見て判断し、後腐れなく買い物ができるのは小売店の大きなメリットであると改めて感じた。その「多少」こそが、お店が提供してくれる付加価値なのだろうけれど。
それでもこのファミコンショップマリオが高度経済成長の中枢を担ってきた新橋の地で今に至り切り盛りしていることには頭が上がらないし、いつの日かその間口を広めて何らかの形で我々新規顧客も迎え入れてくれる方向へ舵を切ったなら、またぜひ訪れたいお店ではありました。
※購入意思の無い方の入店お断りの表記は、骨董化しているレトロゲームの状態を保つためとのこと。とはいえ店内はバックヤードなので、表に出ている商品がほぼ全てかも知れず、興味本位で店内を覗く必要は無さそうでした。