希少価値から当時の定価を大きく上回る破格の価格が設定されるプレミアゲームソフトがあります。
1990年、モノクロであるゲームボーイの弱点を補ったカラー液晶のゲームギアですが、任天堂機ほどの本数ではないものの、ソフトのいくつかは高額なプレミア価格になっています。中でも特に高額な価格の付いたゲームギアのプレミアソフト「IN THE WAKE OF VAMPIRE(イン ザ ウエイク オブ ヴァンパイア)」ですが、その価格はインターネットでの販売価格はなんと最安値で9,980円、定価の約2倍もの価格です。※
それにしても本作はかなりマイナーなタイトルのようですが、ニンテンドーeショップでバーチャルコンソールとしてリリースされているじゃありませんか。
定価の倍近い高額商品である本作はさぞかし楽しいことだろう!という期待を胸に迷わず購入。プレミアゲームソフト「IN THE WAKE OF VAMPIRE」のプレイレポートです。
※2017年5月現在の価格です。
一見ダンジョン探索型かと思いきや、基本一本道のアクション
最初にタイトル画面からゲームをスタートさせると、プロローグが始まります。
全部英語!
いかにも海外らしい画面ですが、前文英語!ローカライズ(日本語化)まったくされておらず、なんとも可愛げの無い画面です。文面から察するに「100年ほど前のロンドンで、満月の夜になると、血液が抜き取られるという殺人事件が起きていた。そこへ超常現象の研究者であるソーシャル博士が現地に趣き、事件の調査を始める。」みたいな中世ヨーロッパの雰囲気漂うストーリーです。
こりゃ大変だとソーシャル博士を操り、いざゲームスタート。
ラウンドは全部で5つ、それぞれ2つのステージから構成されています
舞台はイギリスのロンドン。画面は背景まで丁寧に作りこまれており、様式美漂い、雰囲気ある世界観です。
空中をすばやく飛び回るコウモリ、徘徊するゾンビ、銃を撃ってくるスパイなど、多種多様な敵が登場します。が、これらの敵を倒したところで何か役立つアイテムが入手できるわけではなく、得点は加算されますが、得点によってエンディングが変わったり、ストーリーに変化が及んだりするわけではありません。
途中仮面のようなシンボルが点在し、破壊することで武器やアイテムが手に入ります。武器には「ナイフ」「サーベル」「ステッキ」「斧」の近接武器に加えて、上ボタンと攻撃ボタンを押すことで敵に飛ばせる「爆弾」「ブーメラン」「銃」「杭」と遠距離武器が4種類ずつあります。
それぞれリーチや攻撃力、モーションやスピードなどが異なります。リーチが長く、攻撃力もそこそこ高い「ステッキ」か、リーチは短いものの範囲が広くほぼ全ての雑魚を一撃で倒せる「斧」で、概ねラストまで一直線です。
仮面の中からは回復薬や1UPアイテム、画面上の敵を一掃するダイヤモンドなども手に入ります。
一度倒されてしまうとステージの最初からやり直しとなり、武器は「ナイフ」に戻ってしまいますので注意です。また、ゲームオーバーになると、ラウンドの最初から再スタートです。
本作でも、どこでもセーブできるゲームギアバーチャルコンソールの「まるごとバックアップ」機能大活躍です。
ホラーの雰囲気漂うソリッドな横スクロールアクション
各ラウンドをクリアするとストーリーが挟まれますが、もちろん全文容赦なく英語です。
英文もイラストも可愛さ一切なし!
画面では雲がスクロールしたり、カラフルで作り込まれたステージだったりとグラフィックは見応えがあり、ゲームギアソフトの中でも奇麗な部類に入るのではないかと思います。
様式美漂うステンドグラス
ステージは横スクロールで階段を使って上下のエリアにも移動しますが、基本的には一方通行です。左右に振れる船や大きな時計の振り子などを踏み台にしたり、破壊できる壁から隠し通路を見つけたりしながら進んでいきます。
定番の仕掛けがアクションの良いアクセントに
ラウンド2は蝋人形の館。このステージでは、後ろを振り向いた途端蝋人形がいきなり動き出すという不気味な演出があります。
ホラーな演出にドキッとします
さらに進むと狭い部屋に閉じ込められ、次々に襲い掛かってくる椅子や絵画を一掃しなければならないフロアもあり、骨太で難易度は高めです。
いわゆる「ポルターガイスト現象」のフロアは難易度も高く、何度かやり直しました
さらに進めていくと、生首や宙づりにされた人間などが並ぶ不気味な研究室のステージも登場します。随分際どいグラフィックだなと思い確認してみると、SEGAバーチャルコンソールのソフト紹介ページによると、一応CERO B指定のようです。
12歳未満の少年少女のみんなはちょっと怖いかもしれないので注意しよう!
ラウンドの最後は緊張感の高いボス戦
各ラウンドにおいて、ステージ2の最後にはボスが待ち構えています。攻撃パターンもバリエーションがあり、初見では苦戦する可能性があります。
ボスは何度か戦っているうちにパターンを覚えていきますが、ステージ途中の難易度が割りと高いため、ボス到達時点で残り体力が少なく、あっさりと倒されてしまうケースもあります。
「血をよこせ!」と言ってくる女は体から骸骨が飛び出してくる不気味なボス
それぞれのボスは、方々へ移動しては様々な方向から攻撃してくるものが多く、ノーダメージでクリアするのはなかなかのテクニックが必要となります。
ラウンド3のボス。ムキムキのスーパーマンのような男が弾を飛ばしながら飛び回り、ラウンド4でも姿(服)を変えて登場します
最終ラウンド5の最後にはラウンド3、4で倒したボスが再びパワーアップして戻ってきます。地面から飛び出す突起を避け、上下に浮かぶ床に飛び乗りながらペチペチと攻撃を当てていくこと10発ほどで撃破。
GRAAAAAH!
ボスは最後にドラキュラを呼び出し、連戦開始です。分裂したドラキュラはとんでもない速さでスクロールしますが、どれか一つ本物に攻撃を当てます。
正真正銘の最終戦です
遠距離武器である「杭」を投げつけてから力押しで斧で数発ぶん殴ると…。
あーれー
ドラキュラが落下していき、写真がドカーンと分裂、エンディングが始まります。連戦は厳しいですが、単体でみればさほど難しくはありませんでした。
「ロンドンの街は救われた。だが忘れてはならない、ドラキュラはいつの日か復活の時を伺っている、満月の夜に…。」みたいな内容
こんなゲームが好きならば楽しめる?
クリアしてみた印象としては、非常にシンプルな横スクロールアクションゲームです。プレミア価格の面白さがあるかと言われるとなかなか悩ましいかもしれません。
特筆すべき尖った部分も特に見られず、基本的に出てくる敵やアイテムの場所も固定されているため、何度も繰り返して遊びたくなる要素も特段見られませんでした。
強いて言えば以下のゲームに近い印象があります。
悪魔城ドラキュラ
中世ヨーロッパを思わせる様式美の雰囲気と、2Dのフィールドをゆっくりと歩きながら、途中にあるアイテムシンボルを破壊して武器や回復アイテム入手ながら進むシステムは、ディスクシステム版である元祖「悪魔城ドラキュラ」に近いかもしれません。ただし「キャッスルヴァニア」のような探索要素はありません。
魔界村
禍々しいステージの道中でアイテムを拾い、自分にあった攻撃手段で突き進んでいくのはファミコン「魔界村」に近い印象です。
ステージ上の仕掛けや敵の手数、攻撃手段など、全体的な難易度、戦略の幅は魔界村の方が圧倒的に高いです。
ただしゲームの価値は人それぞれ。楽しさだけが価格の全てではなく、コレクターの方、当時を懐かしむ方にとっては他に代えがたい価値があるというものです。
今回の私のように「これだけ高額ならばきっととんでもなく面白いんじゃないか…!?」と心躍らせている方にとって、購入前の参考として本記事がお役に立てば幸いでございます。