連日様々な形でご報告してまいりましたスイッチの「妖怪ウォッ妖怪ウォッチ4 ぼくらは同じ空を見上げている」をクリアしました。
素敵なRPGだった。
周りの評判に流されるように始めて、気がつけば没頭。最終章の後も実はやることが多かったのですが、数多の積みゲーを差し置いてクリアまでこぎつけましたので、できるだけストーリーのネタバレはしないようレポートです。
煩わしさの排除とメインコンテンツのシンプルさにモチベーション持続!
まずはシステム面について、進行の妨げになるような面倒な要素はことごとく排除されている印象。今のRPGにある様々な便利なシステムが採用されています。
ファストトラベルやイベント早送り、スキップ、オートバトル、ショートカットといった一般的な便利機能のほかに、特に印象的なのがオートナビ。
次の目的地に迷ったりゲーム再開時に思い返してみたりすることもなく、自動で次の行く先へ連れて行ってくれます。目的地を見失ってゲームを詰んでしまったりすることは皆無。
そして、仲間集め、ランドマーク巡り、アイテムクリエイション、育成、カスタマイズといったコンテンツも豊富。
ここで好感が持てたのは、それぞれをプレイヤーに対して決して強要しない点。これらはあくまで寄り道の一環で、これらに長時間費やさなくても本編の進行に沿って進めれば途中で立ち行かなくなってしまうこともほぼ無し。だけど、これらの寄り道は、時間をかけたらかけたでそれなりの報酬があるところも良い。このあたりは絶妙なバランスが保たれていて、コンテンツ、メニューはそれなりに賑やかで多いのに、本筋はシンプル。
妨げになるものが取り払われ、シンプルでテンポも良く、終始ダレることなくモチベーションが持続できました。
童心に返って、舞台「さくらニュータウン」の臨場感が凄い
あれこれ書いておいてなんですが、ユーザービリティが良かったり爽快感があったりなんてゲームは他にいくらだってあるわけで。
ここからがこの妖怪ウォッチ4が持つ大事なオリジナリティについて。中でも特に印象的だったのは、舞台となる「さくらニュータウン」で自分が冒険している臨場感。
飛んだり跳ねたりして屋根に上って、建物の中に入って…なんてどこへでも行けるオープンワールドRPGは数あれど、これほど脇道や広場をワクワクしながら歩いたゲームってあったかしら。
この細道のワクワクには先述のオートナビが一役買っていると推測。目的地を指定して自動でナビゲートしてくれるこの機能を使うと、通ったことの無い入り組んだ近道を自動で見つけて駆け抜けることがあります。だから、意図せず通ったことのない道に新鮮さを覚えるんでしょうね。
ゲームでも現実でも、大人になった今でこそ目的地まで分かりやすい大きな通りに目を向けがちだけど、子供の頃って、自分の暮らした町が世界そのものだったわけで。登下校、友達と遊んだ公園周辺、あるいは人様のご自宅の敷地内、何かあるかもしれないし、無いかもしれない。そういう道を見つけて通って「何かあるかも!」とサーチしてきたもの。
ゲーム中には、写真と同じ場所を探して報酬がもらえる「トレジャー写真」といったコンテンツもあって、この場所を偶然発見することも。
そして、道や建物の細部の作り込みが凄い。妖怪たちが暮らす「妖魔界」はというと、情緒溢れる温泉街のような佇まい。
日常から抜け出して、非現実の環境に足を踏み入れるような旅行のワクワク感があります。
世代を紡ぐ親子の思い
妖怪ウォッチシリーズを全てプレイしてきたわけではないのですが、ストーリーで特徴的だったのが、主人公が未来にタイムスリップし、自分の娘と一緒に冒険をするということ。ありがちではありますが、今後のシリーズの振り方をも決めるような大胆な展開。
私にも娘がいるのですが、このナツメちゃんに自分の娘の姿を投影してみたり。社会性だったり将来の見極めだったり、精神的にはまだ自己形成の途上にありながら少しずつ大人の仲間入りを求められるシチュエーションに娘もやがて直面するでしょう。父はそれを知る由もなく、娘は仲間と少しずつ大人になっていくのです。そういう少しファジーな時期の大冒険。
そういえば子供が生まれた時、私は自分の人生の主人公が変わったのを感じましたが、その不思議な感覚を思い出しました。いつか自分の娘もこんな気の合う友達を作って、仲良く過ごしてくれると良いな。そして今後の妖怪ウォッチシリーズは主人公をどっちにフォーカスしていくのか?ケータ君なのか、娘のナツメちゃんなのか?
反対に、本作は過去に行くこともできます。舞台は何かと回顧されがちな戦後の経済成長期、昭和中期の時代。
ここでも様々な生い立ちを持つ主人公たちが、同じ志を持つ仲間同士探偵団を結成して問題解決に街中を走り回ります。自分や子供だけではなく、そういう青春を自分の父も送ってきたんだろうな。自分の父の中にも潜む無垢な思い出や経験を我々の世代に紡ぎ、そして子供の世代に繋いでいくわけだ。
基本可愛いデフォルメの妖怪がテーマだから、子供向けと油断するんですね。そこに突然大人に刺さるようなノスタルジックな要素を挟んでくるもんだからハッとさせられるわけです。
子供達だけで過ごす、秘密の夏休み感
主人公たちは小、中学生ですが、昼は怪奇事件の真相を求めて様々な人の話を聞いて回り、家族が寝静まった夜は家をこっそり抜け出して仲間と合流し、走ったり自転車に乗ったりしながら街中を駆け巡ります、誰に止められることもなく。
そしてストーリーが終盤へ近くにつれて、長く続いた仲間たちとの非現実的な思い出深い冒険の終わりと、彼らとの別れが近づいていることを知ります。やがて始まる現実は、環境も自分の気持ちもこれまでと少し違ってくることをそれぞれが察し始めます。
その演出を彩る背景がまた妙に力が入っていること。
照りつける太陽、雨上がりの靄、秋の始まりのような夕日。アニメの世界でありながら繊細な色使いや光の反射は、季節感や空気感の表現が秀逸。長い夏休みの終わりを思わせるセンチメンタルな演出。デフォルメされたキャラクターの後ろで光るこういった拘りを見逃してしまうのは勿体無い。
以上、妖怪ウォッチ4のレビューでした。タイムトラベルだったり八百万の神様だったりとストーリーを真剣に捉えればどうしても矛盾や特有の子供っぽさもありますが、細かいお話をストーリー考察するよりも、こういったファンタジーを通じて自分がかつて経験した、あるいはやり切れなかった無邪気な冒険そのものが楽しいゲームでした。
もちろん寄り道や根幹となる戦闘も面白かった!