こっそりと購入、進めていたswitch「ゼルダの伝説夢をみる島 リメイク」をクリアしました。
オープンワールド化されて全く新しい価値を提供したブレスオブザワイルドを除けば、特にセンチメンタルなシナリオに定評があるこの夢をみる島がシリーズ最高と言う意見もよく目にします。
そんなゲームボーイ版を私もプレイ済みですが、今回のリメイクは実際にプレイしてみて、オリジナルと比較してみてどうだったか?感想です。
GB版の構造、システム、手触り、セリフ、感動そのまんま!
ゼルダの伝説夢をみる島リメイクの感想を語る前に、一言でリメイクと申しましても、色々と種類があるわけで。
過去の作品を最新の映像技術を用いてクリアに見せる「リマスター」だったり、それに加えて追加要素を少し加えた「なんちゃらエディション」、核となる部分はそのままに、それ以外はストーリーも全部作り直してしまう「リブート」だとか耳慣れない表現もあったり。
一般的にリメイクとは、ストーリーなど原作の本流は残しつつ、現在の技術やブームに則った表現やシステムで作り直されるものを指すことが多いですね。中には原型など微塵も留めず台無しにしてしまい、当時のファンからこき下ろされるという結果になるゲームも少なくなく。
思い起こせば数年前、「聖剣◯説2リメイク」なんてものは、ふた昔前のグラフィックに作り直されたかと思いきや、バグ祭りだったりなんてことが。
もうちょっと過去の作品で言えば、ゲームボーイの初代聖剣伝◯をリメイクした「新約聖◯伝説」なんてのは、主人公にヒーローに加えてヒロインを選択できるようになったほか、キャラ設定やシナリオも大幅に変更し過ぎたために原作の感動シーンすらカットされてしまった挙句、シナリオライターは実はGB版をプレイしていない事を後に公式イベントでうっかり口にしまうという。吉本新喜劇張りにズッコケてしまいそうなダメさっぷりに、ファンは怒りを通り越して遠い目をしてしまったリメイクなんてのも。
そう考えると、ほんとスクエニってのはリメイクが下手だよね。発売を控えたFFⅦリメイク(3部作)も香ばしさをほんのりと一人で勝手に感じつつ、あまり水を挿すようなことを言うと方々から言われてしまうのでこの辺で。面白そうだよね!
話を戻して、このゼルダの伝説夢をみる島リメイク。
これがまたびっくりするほど当時のそのまんま!
ストーリーもマップ構造はもちろん、操作方法もサブシナリオやキャラクターのセリフまで、基本的には全てオリジナルと全く一緒。
逆に、最新ハードでこれだけ全く同じ手触りを再現したのも凄い。プレイしているうちに思い出すダンジョンの仕掛けやボスの攻略法、隠しアイテムの場所まで。
一部今の倫理上だかなんだかの問題によってか「人魚のブラジャー」が「人魚のネックレス」になっていたりというくだらん手直しは見られたりも。その表現に配慮することで、いったい何人の坊っちゃまたちにどう良い影響を及ぼすのか?ブラジャーって言ったらダメなのか?ブラジャーを好きな賢い方、どなたか教えてください。
水面の光の乱反射、火の揺らめき、そしてジオラマのように焦点以外をうまくぼかしたような独特の映像表現。まさに技術の無駄遣い!
デフォルメされた住民から掻き立てられる想像力が凄い
キャラクターのセリフもオリジナルと基本一緒ですが、あの時代にこの愛すべきキャラたちのセリフの言葉選びや個性センスが凄い。基本全員アクが強いのに、憎めない。
本作のストーリーは、シリーズ屈指のセンチメンタルさ。
遭難したリンクがたどり着いたのは、「かぜのさかな」の夢の世界。そこから出るためには、かぜのさかなを目覚めさせる必要が。その目覚めによって、島で暮らす個性豊かな住民たちも消えてしまう、ということをストーリーを通じて理解していくリンクと、そんなことを知ってか知らずかその行方にほとんど触れることなく彼を明るくサポートし、時々シニカルで愉快に振る舞う住民たちとのやり取りに募る切なさ。
この夢をみる島では、昨今のRPGのようにそれぞれのキャラクターの口からストーリーの状況について語られることはほぼ無く、とにかくキャラクターの個性を描くことに注力されている。結果、ゲームに登場する数十もの住民全てに明確なキャラ設定がされている。こういった任天堂のノウハウが後にどうぶつの森に活きているのかも。
キャラクターのデフォルメ具合もまた良い。
この愉快なキャラクターたちは、島が消えてしまうことに対して一体何を想っているのか?我々プレイヤーがその行間を読んで、描かれないことに掻き立てられる想像力が凄い。私にとって、その最たる例がファミコンのマザーだったりします。
20年以上前から、ゼルダの王者の風格を感じたリメイク作品。
先に申し上げた通り、本作はリメイクでありながらびっくりするくらい手触りが一緒。ベッドに寝転がってゲームボーイを触っていたあの時と同じワクワクを改めて感じられました。
面白みのない言い方をすると「今やっても楽しい」ゲーム。実際「今やっても楽しいよね!」と言われるゲームのほとんどは、そんなに楽しくなかったりする。古臭いしね。
だけど、ビジュアル以外敢えて全く変えないというスタイルを貫いた時、細部まで行き届いてとんでもなく膨大なコンテンツが入っていたことに驚き。しかもゲームボーイでですよ?
そこに私は、なんて言うか「ゼルダの伝説ってのはだな、20年くらい経っても面白いんだよ…」といったゼルダの王者の風格、気迫すら感じました。
プレイ時間は20時間。昨今のフルプライスゲームの中では決してボリューミーではないけれど、ゲームボーイ版を楽しんだ忙しいビジネスマン世代にとっては逆にこれくらいスパッと遊べて終わらせられるというのは嬉しい。
今でも変わらず長時間ゲームしたい、クリア後もガツガツやり込みたい!という気合いの入ったプレイヤーには、ボリュームの面だけで見れば少し物足りないかもしれませんが、当時の感動をもう一度味わうというのはまた独特の楽しさ、懐かしさがありました。
やっぱり夢をみる島は名作だわ。面白かった!