「ジ・インクイジター」の感想。サイコミステリー×中世ヨーロッパのマルチシナリオアドベンチャー!


断罪アドベンチャー「ジ・インクイジター」が2月8日にカリプソメディアから発売。

待っていました!

発売前からYahoo!ニュースでも取り上げられるほど、その残虐な描写で話題になっていたのだ。その内容はどのようなものか?

残虐性を期待するみたいな変態っぽい紹介から入ってしまいましたが、本質はそこではありませんよ?ということで本作の楽しさについて語っていきたく。

弁解の意味も含め!

暴力的な宗教となったキリスト教が統治する、混沌とした16世紀ヨーロッパが舞台のアドベンチャー。

物語の舞台は、磔(はりつけ)の刑に処されたはずのイエス・キリストが殺されておらず、彼の復讐によりキリスト教が暴力的な宗教になった16世紀ヨーロッパをイメージして作られた架空の世界。

主人公は審問官(インクイジター)であるモーディマー・マダーディン。

インクイジターとは秩序と信仰を守るため聖府から派遣された裁判者のような役割で、不信仰者を断罪するために必要とあらば武力で制裁を加えることも。

法を司るモーディマーが、舞台となるケーニヒシュタインの街に潜むヴァンパイアの存在を調査することから物語は始まる。

日々盗み、暴力が横行するケーニヒシュタインで巻き起こる様々な怪奇事件に対し、「真実」を追求するために全ての権限を与えられたインクイジターとなってさまざまな人間を裁いていく。それは尋問から血の制裁まで、情け容赦なし。「求めよ、さらば与えられん」みたいな慈しみのマインドであるとキリスト教を聞いたことがあるが、求めても求めても報われない慈悲もへったくれもない世界観だ。聞いてた話と違うぞ。

しかし、その無慈悲さと判断、その後の展開や結末を楽しむゲームなのである。

あくまでキリスト教の「if」的ストーリー。

サイコミステリー×中世、選択によって変化する展開とエンディング。

インクイジターであるモーディマーとなり街で暮らす人間と会話、時に尋問しながらケーニヒシュタインで巻き起こる事件を解き明かしていく。直面するイベントごとに発生する選択によって展開は変わっていく。

単純な会話ひとつひとつだけではなく、どのように物語を形作っていくかの選択によってもエンディングが変化、何度も楽しめるマルチシナリオである。

娼婦の殺害現場に興味本位で訪れた少女に、遺体を見せないよう配慮したり、盗みを働いた少年を今回は仕方なく許容したりするなど、典型的な日本人らしい行動をつい取ってしまっている。一方で、血も涙もないような選択の末の結末なんかを見てみたい…とか悪趣味な好奇心をくすぐられまくっている自分もいる。ゴクリ。

選択肢はプレイヤーを待つわけではなく、一定時間が経過すると強制的に進行するイベントも発生。モタモタしていると最悪な展開に発展する可能性も。スリリング。

モーディマーはインクイジターとしての特殊な能力を備えていて、事件解決への有力な手がかりを見つけることができる。

一つは「祈り」。

目的地は遠くに光の柱として浮かび上がったり、視覚的に現れる臭いの方向を追跡したりすることで、進むべき場所が明瞭に示される。作り込まれ入り組んだケーニヒシュタインの街でも迷うことは無し。

だって見てくださいよこの街のロケーション。

この入り組んだ仄暗い下層階から、

「地球の歩き方」に出てきそうな上層階まで。

ちょっとした小旅行気分ですよ。そしてマップが広い。

ケーニヒシュタインでは貧富の差が激しく、事件の起こる下層階とのコントラストがまた雰囲気を感じさせる。

またモーディマーは人混みと喧騒の中で人々の噂話を遠方からでも聞き取ることができ、真相の足掛かりを得ることができる。

続いて「非=世界」。

祭壇で祈りを捧げたり、啓示的なシーンなどで発生。記憶の欠片を集めることで、事件に関わる人物の本性を断片的な映像として知ることができる精神世界のような場所である。モーディマーはここで真実を断片的に知ることになる。

この非=世界で得た情報をもとに、モーディマーはそれを隠蔽しようとする関係者にどのようなアプローチを取るのか?その策略もプレイヤー次第であり、当然ながらその結末も変化していく。先行きが興味深い。

シンプルながらもタイミングや駆け引きの要素は備わっているアクション。

物語の要所で戦闘パートもあり。

回避、防御、および大小攻撃などのシンプルなアクションを組み合わせつつも、パリィなどの正確なタイミングと駆け引きの要素がしっかりと組み込まれている。

ストーリー展開を楽しむゲームなので、アクション面ではこれくらいの難易度の方がストレスが無く遊びやすい。アクションが苦手なプレイヤーも問題なし。

また作中の仄暗い中世の雰囲気からソウルゲー?と錯覚しそうではあるけれどゲーム性は全く異なるのでご注意を。

そして先述の非=世界でのアクションが楽しい。

正面同士の戦闘に加え、非=世界での戦闘は遮蔽物の陰に隠れて背後から相手をステルスキルすることも可能。ところが、同時に空中で飛び回る巨大生物の視角に入ってしまうと、巨大なレーザーを射出してきてゴリゴリ体力を削られる。怖過ぎる。

体力を全て奪われるとミスになるが、ペナルティなどは無いので何度もリトライ可能。叫びながらプレイするのがよろしい。

話題となった描写の過激さは?PS5では欠損描写に修正あり。

話題となっている描写について、どのくらいショッキングか?

うむ…これは確かに過激である。

私がこれまでプレイしてきた展開ではたとえばこんなシーンが。捕獲され、手足を繋がれた容疑者をモーディマーが尋問。しばらくその場を離れ再び戻ってくると、そこではサイコな処刑人が拷問の末…とか。

修正の入ったPS5についてはいたずらに過激というわけではなく、物語のダークさ、凄惨さをリアルに表現するのに相応しいレベル。

描写云々よりもストーリーそのものが面白いので、グロかろうが爽やかだろうがありのままを受け入れられるくらい物語にのめり込めるし、展開が気になる!

雰囲気は好きなのだけれど、残虐すぎるのはちょっと…という方であっても、国内のやや過激なサスペンス映画くらいなら平気よという方であれば十分楽しめるのでご安心を(と、言ってもCEROレーティングZ指定相当の過激さはあるのでご注意)。個人的にはSAWだのCUBEだの海外のデスゲーム系の映画の方がよっぽど後味が悪かった。

一方でどうしても「残虐!部位欠損!」みたいな変態さんは、他のプラットフォーム版もチェックいただくとたまらないかもしれない。

また申し上げるようだけれど、ニュース等で話題となった描写面での残虐性が先走ってしまっている印象。けれど、そもそものストーリーをプレイヤーが紡いでいくことが面白いゲームなので、ぜひストーリー展開を楽しんでみてほしい!どんなパターンの結末が存在するのか?これから楽しみ過ぎる!

ジ・インクイジター PS Store

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