ドラクエ、スプラトゥーンと波寄せる人気作の新作ラッシュに追われる2017年8月現在、そんな時こそ歩みを緩めて古き良きレトロゲームに手を伸ばしてみます。
先日池袋のレトロゲームショップ専門店「スーパーポテト」で、わずか280円で叩き売りされていたゲームボーイアドバンス「のののパズルちゃいリアン」。過去に当ブログで、世界観、操作性のセンスと得られる体験の斬新さに褒めちぎったことのあるゲームボーイタイトル「ちっちゃいエイリアン」の続編はまさかのパズルゲームです。
ちっちゃいエイリアンとは?
オリジナル作品となる「ちっちゃいエイリアン」とは、ゲームボーイカラー専用ソフトとして2001年2月27日にリリースされたエイリアン集めゲームです。
ちなみにPS2の発売が2000年。そう考えるとゲームボーイってとても息の長いハードでしたね。
ゲームボーイ本体の赤外線機能を使って、光やリモコンからの赤外線を受信してそこに潜む「ちゃいリアン」を捕まえて、様々なミニゲームで遊びながらダークマターなる物質を集め、最終的にちゃいリアンたちを宇宙に帰すというそれだけでもゾクゾクする設定です。
世の中には得体の知れない面白さのゲームがありますが、このちっちゃいエイリアンも然り。キャラクターの愛らしさ、ウザさがいちいち絶妙に組み合わさることで、単調なコレクション性とミニゲームがどれも愉快に感じられる不思議なゲームです。
ちゃいリアン収集を含め、レトロフリークでもプレイ可能でした。
続編GBA「のののちゃいリアン」
そんな名作ゲームの続編はまさかのパズルゲーム。かつてその妙な雰囲気漂うシュールなTVCMから一部のプレイヤーに対して強烈なインパクトを与えました。
よく分からない雰囲気を醸し出すCM
ゲームのルールは至って簡単、2x2の4マスのオブジェクトを時計回りか反時計回りかに回転させるだけ。この操作でもって、様々なものを並べたり移動させたりしながらステージをクリアするパズルゲームが3種類遊べるというものです。
操作説明もちゃんとしてくれる
落とすパズルゲームは多いですが、この様に回転させるというのもなるほどシンプルで面白いです。
「チクタクバンバン」「メイドインワリオ」「なぞぷよ」のような面白さ!
パズルゲーム3種類とは「くるくるレンジ」「くるくるウォーク」「くるパチ6」の3つです。
まず「くるくるレンジ」は、4つのマスを回転させて、食べ物を穴にひたすら落としていくというもの。
一見簡単そうですが…
マスを回転させながらブタやケーキなどの食べ物を移動させ穴に落とすのですが、各ステージで設けられた制限時間はたったの5〜10秒と超短時間、どのように動かすかを瞬時に判断するという緊張感溢れる内容です。
穴に食べ物を入れると、電子レンジで料理が完成されます。
短いゲームをわずか数秒でクリアし、ひたすら先のステージへ進んでいくというこの緊張感は「メイドインワリオ」に近い感覚です。
シンプルで分かり易く、焦って変な場所を回転させてしまったりと、つい熱くなって一人で声が出てしまいそうな内容です。
ステージを進めていくと、もう電子レンジの中身はなんでもいいものになっていきます
続いて「くるくるウォーク」。
やはりこちらも緊張感溢れ、右へ右へひたすら前進する「ウォーカ」なる白いちゃいリアンを、様々な形の通路(マス)を回転させて繋ぎ合わせゴールまで導くというもの。
途中で留まってしまうとウォーカは落下してやり直しですが、クルクルと床を回せばなんとかなりそうなもの。ところがステージが進むに連れて、道を遮る敵ちゃいリアンや床を爆発させる時限爆弾、耐久性の弱い床があり、ウォーカをダッシュさせる必要があるなど、その操作は回転だけに留まりません。それにしても、どこかで体感したことのある楽しさです。
あ!
そう、この感覚はまさに40歳前後かそれ以上の大きなお友達は懐かしさにむせび泣きそうな往年のレールゲーム「チクタクバンバン」そのものです。とか言っておきながら、例としてさらっとこれを挙げられるあたり、私も歳をとったものだと痛感させられる始末。その楽しさ、スリリングさは言わずもがな。
最後に「くるパチ6」ですが、これがまた妙な中毒性があります。
並べられた数字のパネルをその数だけ縦横に並べ、連鎖させながら消していくもの。このくるパチ6には、一度だけどこかのマスを回転させ、画面全てのパネルを消去させる「いちくるパズル」と、決まった数だけ回転させて、画面のパネルを消去させる「チェインパズル」の2つのモードがあります。
前者はまさに名作パズルゲーム「ぷよぷよ」のなぞなぞコンテンツ「なぞぷよ」に近いクイズ感がありますが、そこまで難しくはありません。が、やめ時が分からなくなる理由の一つとして、ステージをクリアした後にちゃいリアンが一言がゲームには一切関係の無いまめ知識を話してくれ、妙に知的好奇心をくすぐってきます。
…知ってました?
「牛のヨダレは一日一リットル」とか「ドレミファソラシドはイタリア語」といった、凄くどうでもいいのになんだか知りたくなる知識を教えてくれます。
ステージは全部で99ステージ。段々難易度が上がっていきますが、基本的には1ステージに対して操作は一回転だけなので、どのマスを右に(左に)回転させるか?何度もトライすればいずれは当たるような仕様です。
ちなみに最終ステージ99の豆知識は「地球の植物の○%は海の中に生える」というもの
ところがもう一つのモードである「チェインパズル」は、指定された上限回数分マスを回転させて、画面上のパネルを全て消すというもの。言葉では説明が難しいのですが、パズル要素に加えてタイミングも必要となるため、全99ステージを全てクリアするのはなかなか至難の技です。
尚こちらも各ステージクリア後に地味に引きつけられる豆知識を教えてもらえます。
「チェインパズル」最終ステージ99面の豆知識「かいわれダイコンの種は…?」
映像良し!音楽良し!キャラ良し!パズル良し!だけど…?
本作をプレイしてみた感想として、映像、キャラクター、音楽といったクリエイティブは全て素晴らしく、ハイセンスそのものだと感じました。
メインコンテンツとなるパズルも複雑な操作は一切必要なく、くるくると回転させるだけという至ってシンプルな操作で様々な結果に発展していく、パズルゲームとしての必須条件を完全に満たしています。間違いなく面白いです。
ところがなぜだろう、オリジナル「ちっちゃいエイリアン」の大ファンの私にはどうも釈然としないモヤモヤした何かがあるのです。その理由をよく考えてみると、「そもそも真骨頂であるちゃいリアン集めの要素が全くない」これに尽きるなと考えました。
シニカルでシュールで毒があってヘンテコなちゃいリアン達は可愛いです。
しかもファンのためのスピンオフと捉えると、ちゃいリアンの登場シーンは少なく、やっとゲームクリアした時に時折ちゃいリアンがなんとも気の利かない(褒め言葉)セリフをちょっと話す程度。せっかくのちゃいリアン達に触れ合えないというのは残念です。
ただしシュールでシニカルな世界観はちっちゃいエイリアンそのもの。カジュアルなパズルゲームをちょっとやりたい、でも「ちっちゃいエイリアン」って何ですか?というプレイヤーには、ちょっとクスリとできる愉快なゲームであることには間違いありません。
ちなみにレトロフリークでプレイしました。
本作の発売から2017年現在に至って、特にちっちゃいエイリアンの新作リリースに関する情報は見られませんが、万が一この先に続編ないしスピンオフが登場するのであれば、ぜひ再びあのキモいちゃいリアン達を全面に押し出した、ヘンテコな世界観のゲームにして頂きたいものです。